4月末日。とあるメディアで若手バンドのライブレポートを担当したんですが、その時メジャーレーベルの広報担当の方とお話をしました。その中で印象的だったのは「今は東京よりも関西にいいバンドが多いんですよ」と言われたこと。
個人的にはここ数年、関西のインディーズシーンはバラエティー豊かで面白いバンドが多いと思いながら取材を重ねています。今はメジャーレーベルもその肌感覚をもってシーンを見つめていることは面白いと思った反面、「まあ、当然だよな」とそんなことを思いました。
そんな自分がANTENNAでのライフワークとしてやっていることの1つに、若手アーティストのチェックというのがあります。毎月、関西圏のいくつかのライブハウスをチェックして、初めてそのハコに出演したバンドをピックアップ。音源を聞いて、個人的にいいと思ったバンドをANTENNAのスタッフと共有しています。今回は1月〜3月にかけて個人的にいいと思った若手アーティストをここで紹介しようと考えております。
👉チェックしているライブハウスとその特性
アーティストの紹介の前に、僕がチェックしているライブハウス6つを紹介します。
Live House Pangea
大阪・心斎橋にあるライブハウスで、個人的には関西でもよく通っているハコの1つ。出演者のカラー的にはかなりポップであり、すぐにでもメジャーにいけるのではと思うくらい、良質なメロディを叩き出すバンドが多いという印象です。また店長である吉條壽記さんはRAZORS EDGEでドラマーとしても活動しており、メロコア系のバンドが出演することもある。
Webサイト:https://livepangea.com/
X(旧Twitter):@Pangea_osaka
寺田町Fireloop
過去にはハヌマーンといったバンドも輩出した、大阪・天王寺にあるライブハウス。1回のライブでの出演者が多く、新人バンドも多くブックキングしている印象です。ここに2~3度出てから 〈Live House Pangea 〉や〈ライブバー ファンダンゴ〉へ出演するバンドも多い。また店長である足立 浩志さんは新しいことに対して能動的であり、LIVE STORAGE VRやFree Wi-Fi を開放するなど他のライブハウスにはない新しい取り組みを次々と行っています。
Webサイト:https://fireloop.net/
X(旧Twitter):@Fireloop_info
ライブバー ファンダンゴ
もともとは十三の名店であったファンダンゴが、堺市に誕生したのは2019年。堺にいても十三時代に持っていた、アンダーグラウンドとオーバーグラウンドを遊泳するスタイルは変わらない印象です。なお先代の店長であった加藤鶴一さんは情に熱い昔気質の人ということもあってか、計算高いライブをするバンドよりも、「俺はこれがやりたいんや!!」と熱意の赴くままライブをするバンドがよく出演しているという印象です。
Webサイト:https://www.fandango-japan.com/
X(旧Twitter):@fandango_sakai
梅田HARDRAIN
大阪は北区兎我野町にあるライブハウス。このハコに関しては先に紹介した3つとは明らかに毛色が変わります。これからメジャーにむかって頑張るといったバンドがでるステップアップの場というよりも、自己表現としてのライブをするアーティストたちのたまり場という印象。他のライブハウスに比べると、出演者の年齢層も高い。また店長の加納良英さんがアーティストとして登場されることも多く、そういう意味ではアットホームという言葉がよく似合う場所なのかもしれません。
Webサイト:http://hardrain-web.net/top.html
X(旧Twitter):@umeda_hardrain
MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
神戸のライブハウスの中でも、ガガガSPなどの地元に根を下ろしているベテランバンドから、若くて期待度の高いバンドまで、バランスよく出演しているハコ。このライブハウスが他のライブハウスと違うのは今年で20周年となる『COMING KOBE』を開催している点です。このイベントは若いバンドマンにとっては1つの憧れになってきています。そういうこともあって、毎年3月〜4月あたりのオーディションを受けて以降、同ライブハウスへ定期的に出演しているバンドも多いです。
Webサイト:https://taitora.com/
X(旧Twitter):@taitora_kobe
奈良NEVER LAND
奈良の老舗ライブハウス。県内にはライブハウスが少ないため、アイドル系やHIP HOP系などのライブも定期的に行われます。しかしながら、Age Factory、LOSTAGEなど奈良出身のバンドが定期的にイベントを行うなど地元バンドの密着度合いが非常に高い。雑多でありながらも、愛され度が非常に高いライブハウスです。
Webサイト:http://nara-neverland.com/pc/
X(旧Twitter): @NARANEVERLAND
という、計6つのライブハウスを定期巡回してます。
👉若手アーティスト5選
1. 蟹光船
2023年結成、大阪を拠点に活動しているバンドです。どこにでもいそうな大学生の兄ちゃんたちみたいな風貌。だけどマディ・ウォーターズ、バディ・ホリーのようなオールディーズなロックンロールに銀杏BOYZの持つ性春の香りを漂わせるパンクスを組み合わせているのが大変面白い。
X(旧Twitter):@kanikoousen
2. カニバル
関西の若手バンドの登竜門である『十代白書』、その決勝まで残った5人組プログレッシブバンド。プログレの持つ一筋縄ではいかない音楽性とドラッギーなサウンドですが、思わず口ずさみたくなるようなポップなメロディーも兼ね備えています。個人的には米津玄氏やTOBEといった「ポップの第一線で活躍しながらも、異物感あふれるヤバい何かを作れる」アーティストの延長線上にカニバルはいるのかなと感じます。
X(旧Twitter):@Cannibal_niku
3. ヨークシン
岡山出身のバンド。とにかくエッジが効いていて破壊力のあるサウンドが持ち味。ライブを観てもあまりの緊張感に拍手するのを忘れるくらいに、見入ってしまいます。個人的にはすごく若いころのMO'SOME TONEBENDERを思い起こしたりもしました。
X(旧Twitter):@yorkshin_49
4. 天国注射
大阪発、若手サヴェージダンスパンクバンド。〈難波Bears〉を拠点に活動し、Gezan主宰の野外フェス全感覚祭にも出演。『天国注射の昼』から名を取っただけあって、殺気立って客と対峙して、身を削って自分の音楽をやろうとしている姿はとにかくカッコいい。また縦横無尽に自分の音楽表現を叩きつけるボーカルと対照的に、それを支える演奏がクールで緻密な部分も面白い。
X(旧Twitter):@Tengokuchusha
5. Mama Rag
2024年結成。先日4月22日に初ライブをした2人組の音楽ユニット。まだアルバムしか聴いていないですが、これがなかなかいい。フリッパーズ・ギター以降のギターポップが持っているかわいらしさみたいなものを受け継ぎつつ、ギターフレーズのところどころに90年代のオルタナティブな響きも感じられる。関西のギターポップバンドといえば、Easycome、ベルマインツ、ハク。、Nagakumoなどさまざまいるが、また新星が登場したなという印象です。
X(旧Twitter):@mamaragband
今後四半期に一度はこういう感じで関西のおすすめのバンドを紹介していきます。また今回紹介したバンド含めて、今後チェックすべきバンドをプレイリストで公開していますので合わせてチェックしていただけたらと思います。