ボランティアスタッフ/ライターの竹内です。先日、京都の大学を卒業しました。大学最後の数カ月、私は京都の大学生バンドにフォーカスして自主的にリサーチを続けていました。EVENT記事を書いてはそのライブに足を運び、できる限り出演者にご挨拶してお話を伺う……ということを、ほぼ毎週のように。
まだライターとしてキャリアの浅い私が、経験を言い訳にすることなく「今、最大限に役に立つには何ができるか」を考えた結果、始めたこと。お仕事ではありますが、とても個性豊かで確かな音楽愛を持った方々の色々なお話を伺ううちに、自らの視野が広がっていく感覚が楽しくて仕方なくなってきた最近です。ここでは、私が2月末から3月の京都の大学生バンドシーンを見て、個人的に気が付いたことをお伝えできれば。
👉『ローブスター感謝祭’24 春』の人々
大学生という立場上、就職や卒業など人生の大きな節目というものがついて回る。あいにく、「バンド活動継続」という目標とは非常に相性の悪い節目ばかりである。進路も家庭の事情も人それぞれ。音楽という正解のない世界での人間関係もなかなか難しい。「やめたくねえー!」、「音楽続けたいだけなのに」、「この先、分かんないんすよ」。色んな声を聞いた。大学生バンドってこんなに儚いの……?そんなことを思っていた私の心に喝を入れる出来事があった。
2月の終わりごろ、京都にある〈Live House DEWEY〉にて開催された『ローブスター感謝祭’24 春』というライブイベントへ足を運んだ。主催は、ロブスター、オートコード、Akane Streaking Crowd、日本少女。普段から互いを認め合って切磋琢磨しており、プライベートでも仲が良いという。それぞれに音楽性も個性もまるで異なるけれど、大学やサークルなどの垣根もこえて繋がっている。だからなのか、すべてのバンドが自立したそれぞれの音楽集団としてストイックな軸を持っているように感じる。そんな彼らも、多くのメンバーが例によって大学卒業や就職という節目を迎えようとしていた。ところが……
「死んでもやめんじゃねえぞ!」
ライブ中にそう叫んだのは、ロブスターGt&Voの船木くん。ライブハウスに強く響いたその一言は、彼やロブスターだけではなく、その場にいたバンドマンたちの総意のようにも感じられた。終演後、私はいつものように出演者たちに声を掛けた。すると「日本少女は何があっても続けます」「Akaneは継続です」「オートコードは絶対にやめません」……それぞれにお話を聞いていくなかで、彼らは口を揃えて「やめない」と言った。
👉どんな形でも音楽を鳴らし続けること
3月、〈京都GROWLY〉にて行われた『サブマリン1st EP 『潜水艇』Release Party』へ足を運んだ。出演は、あの街の水色、オートコード、モラトリアム、サリバーン、そして主催のサブマリン。あの街の水色を除く4組が現役大学生バンドだった。
『ローブスター感謝祭’24 春』にも出演していたオートコードGt&Voの轟くんが、「僕たちはみんな春から定職に就いてしまいましたが……」と自分たちの近況について少し語ったあと、他のバンドに向かって「やめんなよ!」と叫んだ。すると、前方で観ていた他のバンドたちから歓声が上がった。2月のあの日からバトンが繋がれたと、勝手に思った。これもまたきっと、みんなの総意だ。
モラトリアムGt&Voの中村くんは、大学を卒業して音楽の道を選んだことを教えてくれた。さらに、メンバーの進路の関係で3月いっぱいで活動休止することを発表していたサリバーンは、演奏や終演後に聞いたお話から、既にバンドとして未来を見ているように思えた。サブマリンの笠浪くん(Gt&Vo)も「音楽続けたいです!」と言っていて、タカノくん(Gt)はSNSで「腐るところまで音楽続けてみます」と綴っていた。
それぞれの想いに触れて気付かされた。音楽って、そう簡単には鳴りやまない。音楽に正解がないように、続け方にも正解はないのだと。「やめない」というのは、必ずしも今の状態をそっくりそのままやめないということではないんだ。
そのことに気付く前に書いたこのイベントの記事には「音楽が彩った時間があったという事実は残り続ける」と書いた。その事実という足跡の続く先には、これからいくらでも歩んでいく「人」がいる。それぞれ異なる事情を分かった気になることだけは避けるべきだが、生き方の幅が広がったこの時代だからこそ「様々な未来を見逃さない」視点は持っておきたいと思った。