2週間旅行へ行けるとしたら、どこへ行きたいか。社会人になってから、特に20代のうちに14連休をとれるのはかなり珍しいことだと思う。少なくとも、私は社会人生活で初めてのことだし、この先も2、3年くらいはとれないかもしれない。
そんな中で私が選んだのはロンドン。UKロックが好きだから、といいつつ好きなバンドはマンチェスターやブリストル出身が多いし、ロンドンを舞台にした映画が好きといってもその映画は30年以上前のものだからもはや違う街といっていい。つまるところちゃんとした動機はなく、強いていうなら「ただの旅行」だ。
せっかくだからと何本か興味のある分野について取材はしたし、それ自体は非常に有意義なものとなったので結果オーライ。ただ、ここでは敢えて記事にはならなそうな個人的に気になったことをピンポイントで紹介したい。
書き手:ivy
👉チャリティショップは宝の山
ロンドンでちょっとニッチな音楽を嗜好するような人が集まったり、スペシャルティコーヒーが飲めたり、センスのいい飲食店があったり、そういうエリアは東部だ。特にハックニーと呼ばれるエリアが該当する。元々は移民街だったエリアで、現在も住民のルーツは多様性に富んでいる。当時は家賃が安かったこともあり、若いアーティストやクリエイターが住んだことでそう言った新しいお店が増えてロンドン屈指の人気エリアとなった。
家賃が逆に上がってしまい、駆け出しのアーティストがとても住める街ではなくなってしまったようだが、未だにインディペンデントなライブハウスやレコードショップが多く、そう言った類のイベントも連日行われている。
そんな街だからか、街角のチャリティショップ(日本でいうリサイクルショップ)にも、なかなかコアな品物が集まってきていた。
レコードコーナーがおすすめ、といいたいのだが、正直なところレコードはあまりめぼしいものはなく、一番興味深かったのはCDのラックだ。すべてが1枚1ポンドで叩き売られていたが、その中からCrushed BeaksやSurfer Blood、Beach Fossilsらサブスクが一般化するギリギリ手前の時代のインディーロックが次々と“出土”した。
ちょっとナードで、でも部屋に余計なものは起きたくない派の、20~30代前半くらいのロンドナーたちが泣く泣く断捨離の末に持ってきたのだろうか。
👉ロンドンの深夜飯
ライブハウスやクラブ、パブで呑んでいると、腹が減る。日本なら、居酒屋か中華料理屋か。一人だったら、ラーメン屋か牛丼屋、コンビニでも探す。これにあたるものがロンドンにはない。大抵の飲食店は22時に閉店してしまうし、パブで食べ物を頼むという文化が基本的にあまりないので延々とみんなビールを飲んでいる。
現地在住の友人に聞いたところ、家で適当に済ませるかほぼ唯一といっていいくらいの深夜に外食できる選択肢としてピザスタンドを教えてくれた。チェーンという訳ではないが、なぜかロンドン中どこにでもある。主に移民と思わしき方がやっていることが多い日本でいうケバブ屋のような作りのお店だ。
メニューはピザ、ハンバーガー、ケバブ、フライドポテト(イギリスの「チップス」という呼び方はなんだかうまそうで気に入っている)。このラインナップも大体同じで、値段は物価が高いロンドンならかなり安い方だろうなというイメージ。
味はかなり酔っぱらっていたこともありほとんど覚えていないが恐らく可もなく不可もない。日本にあったらまず行かないであろうくらいだと思う。だた、深夜バスに揺られてへべれけでやってくる人が見ていてとにかく面白い。
22時にナイトライフ以外の街の機能が停止するロンドンにおいて、こんな時間に飯を食っているということがかなりメインストリームから外れた行為だ。やってくるのは一癖も二癖もありそうな、夜のロンドンの住民たち。スキンヘッドのハードコアパンクスであったり夜勤上がりでこれからクラブへ行くという移民の若者たちであったり、真っ赤なダッフルコートを着たラスタマンの老紳士であったり……。固定カメラを置いたらそこでミュージックビデオが完成しそうな強烈さを空間にいる一人一人が持っている。
スタンドだから、イートインをしてもせいぜい10分しか滞在しない。その分、次から次へと人が入れ替わり、やたらと存在感のある人が渋滞する。現地に滞在中、何度か夜中のピザスタンドへ寄ったが、毎回強烈なキャラクターを持った人物に遭遇する体験は下手したら一番興味深い体験だったといえる。
そういえば、ロンドンで食事の話となると必ずフィッシュアンドチップスの話が挙がる。あれに関してはさっぱりお勧めしない。それなりにWEBのレビューで評価の高いお店に行っても、魚が生臭くてぱさぱさしていて、下味をつけていないから味気ない。
中にはおいしいお店もあるんだろうが、それを探し出す労力があったら他のことに時間を割いた方がいい。きっと、掘り出し物のCDを見つける方がはるかに短時間で大きな成果が挙げられるはずだ。